Plurality: 協働可能な多様性と民主主義のためのテクノロジー
Translated by: Akinori Oyama and tkgshn
新しい著作の紹介と協力者の募集
Plurality: 協働可能な多様性と民主主義のためのテクノロジー
私たちは長い旅に出ようとしています。皆さんもご一緒しませんか。5 年間以上に渡り、私たちは多くの皆さんと協力して、金融化や中央集権的な人工知能に焦点を当てたテクノロジーの未来についての通常の物語の語られ方に代わるものを発展させてきました。 「Plurality(複数・多次元性)」と私たちが呼んでいるものは、社会的および文化的な違いを超えた協力を認識し、尊重し、力を与えるテクノロジーです。Plurality については、この案内に続く概要の章を読むと、より深く理解していただけると思います。私たちは、「「Plurality」が民主主義社会の繁栄を支えるためには自然に導き出される技術的パラダイムであり、今日の世界に定着した多くの分断を克服できると信じています。私たちはこの可能性を世界に伝え、それを実現するための多様で協調的な投資と実験的な試みを促せるようにしたいと考えています。そして、私たちはあなたにも手伝ってほしいのです。
私たちの計画は、”Plurality そのもの”に関する研究と、社会実装の実情の両方によって発展していきますが、私たちは、本を作り、、届け、、それらを金銭的に支えていく方法においても、本に記すのと同じように、体現できるようにしてことを約束します。すべての素材は、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの最も寛容なカテゴリの 1 つである「フリー・カルチャー・ワーク」になります。私たちは、この本を git の仕組みのように公開の場で執筆する予定です。つまり、コミュニティから編集や研究の協力をオープンに募り、プルリクエストの優先順位付けを支援して結果として本の内容を調整管理するために貢献してくれる人を募る予定です。私たちは、Plural/Quadratic Funding (通例 QF、二次資金調達)形式での助成金や、物理的およびデジタル的に購入された書籍のコピーに対する NFT「署名」や、本に関する講演者やコンサルタントとしてグレン・ワイルへの依頼手段としての SALSA/Harberger NFT など、さまざまな相応しい Web3 ネイティブのメカニズムの数々を使用して、本を利用できるようにするための財政的費用をサポートします。私たちは、Soulbound Tokens (SBT) をこの本の出版に関するさまざまな貢献に応じて付与し、出版(完成)したあと、”それらをどう進めていくか”に関しての決定を最終的には DAO に委ねていく予定です。これに関しては、出版作業そのもののために集めたお金(雇用も含む)のほか、売り上げの配分などもどのように行うかも含まれます。私たちは Protocol Labs (PL) と緊密に連携して、これらを実現するための技術基盤を構築し、Web3 時代の新しい出版モデルの発明に役立つことを願っています。
同時に、私たちは Plurality 主義者として、「Web 3 ネイティブ」な人たちだけに届けたいわけでありません。そのため、この著作を物理的な作品としても、標準的な出版およびメディア流通経路でも幅広い範囲で配布され、レビューされ、読まれる美しい物理的作品にしたいと考えています。したがって、ハッカーやライターだけではなく、デザイナー、ストーリーテラー、マーケター、翻訳者、出版社などにも協力していただく必要があります。“今のうちにこれに貢献しておけば、今後ソーシャルキャピタルを含めた資産が手に入るかもしれない”という人がいる反面、より個人的な利益・権利を求める人がいることも理解しています。このため場合によっては、私たちの目標やビジョンをはじめ、他の側面でも同じような考えを持つ方々と連携する交渉も受け付けます。いずれにせよ、この呼びかけをしているオードリー・タンもグレン・ワイルも、著作する文章の貢献に対する報酬やロイヤルティを受け取ることはありません。こうする目的は、わたしたちそれぞれが雇用に関連する法的責任を遵守し、私たちの使命と私たちが構築したいと考えているコミュニティを収益が支えていけることを保証するためです。
私たちは、公の場での執筆と参加の管理を可能にするソフトウェアで実現される基盤をまもなく公開しますが、それ以前に貢献したい方法を思いついた場合には、どうか Glen 宛にお知らせください。私たちが協力してテクノロジーを想像し説明することで、テクノロジーの未来は、私たちが大切にしている価値を尊重し可能にするものになれます。
概要
テクノロジーと民主主義は戦争状態にあります。テクノロジーは権威主義的な監視を強化し、民主主義制度を侵食しています。一方、民主主義は制約的な規制と公共部門の保守主義で反撃しています。この対立は避けられません。その中で、人工知能 (AI) や暗号通貨などの反民主的なテクノロジーに投資することを、私たちは選択してきました。その一方で、イーサリアム コミュニティ、エストニア、コロラド州、特に台湾などのいくつかの場所では、代わりに、多様な協働を可能にするテクノロジーに集中しており、民主主義とテクノロジーが共に繁栄するのが見られました。この Plurality の新しいパラダイムのリーダー集団によるこの本は、技術者、政策立案者、ビジネス リーダー、活動家のすべての人たちが Plurality を利用して、より協力的で多様で生産的な民主主義の世界を構築する方法を初めて示すものです。
Uber が台湾に上陸したとき、世界の多くの地域と同様に、その存在は対立の種となるものでした。しかし、ソーシャル メディアによってこの炎上に油が注がれたのではなく、大臣でもある私たちの 1 人が仲間と一緒に開発した vTaiwan プラットフォームを用いることで、市民が意見を出し合うことを可能にしました。配車サービスをどのように規制すべきかについて、この問題について意見を持つ市民が何千人もの参加者と思慮深く熟慮した会話を行いました。ここでのテクノロジーは、AI としばしば同じと連想される統計ツールが意見をクラスターにまとめるものでした。これにより、議論への参加者すべてが、対等な立場の市民が出した視点を、最も明確な形で表現されることで消化できるようにして、参加者が自分自身の考えを洗練できるようにしました。当初の分断されたそれぞれの考えを越えて支持を集めた意見は最も大切なこととして掲げられ、労働者の権利を保護しながらも新しい配車ツールの利点も保証するような大まかな合意が形成され、政府によって法整備が実施されました。この仕組みは、台湾では他にも論争の的となっている何十もの問題を解決するために使用されていて、世界中の政府、協同組合、ブロックチェーン コミュニティに急速に広がっています。
しかし、vTaiwan は、協働の仕組みとして社会での違いの認識、尊重、橋渡しを、テクノロジーで解決するように設計できることのほんの表面をなぞったにすぎません。イーサリアムのエコシステムから生まれた新しい投票と資金調達のルールは、公共部門と民間部門を管理する方法を再形成する可能性があります。他にも、没入型の仮想世界は、社会的に排除された括りを越えて共感的なつながりを可能にしています。ソーシャルネットワークとニュースフィードは、私たちを引き離すのではなく、社会的結束と共有された意味付与を築くように設計できます。そして、台湾の経験が示しているように、潜在的な社会的利益は膨大で、新型コロナウィルスのパンデミックを始め、誤った情報からの混乱などの近年のさまざまな危機への対応に留まらず、広く共有された繁栄の創出にも、世界で最も優れた対応を可能にしています。
しかし、少数の国やエコシステムがそのような技術に数千万ドルを投入している一方で、それ以外では世界中で、AI と暗号に数千億ドルを投入しています。ここでは 根本的に異なる目標が追求されています。AI の目標は、自動化によって人間が参加できないようにし、権力を集中化し、専制政治を強化し、中産階級を弱体化させることを目指すものです。投機的な暗号通貨、中毒性のあるソーシャル メディア、現実逃避的な「メタバース」は、社会構造を弱体化させ、社会的分断を強化し、インフォデミックを広め、犯罪を増加させてきました。したがって、これらのテクノロジーに投資した国々が民主主義とテクノロジーを敵と見なしていることは驚くに値しません。さらに、これらのアプローチは、社会構造だけでなく、量子的性質が Pluralism の提唱者の原則に基づいていることが近年示されている物理的宇宙の基本構造に対しても、生態学的多様性に満ちた私たちの生きている地球に対しても害をなしています。
しかし、進む道を変えるのに遅すぎるということはありません。私たちは、デジタル上の人権を確立し、Pluralism を強化し、民主主義社会を繁栄することの全てを実現できるテクノロジーに投資するようになることも可能です。これによって、権威主義や超資本主義を凌ぐことができます。私たちは、すべての人が中央集権的な監視から解放されて、旅行、取引、事業を行い、民主的なコミュニティに参加できるようにするような、新世代の分散型アイデンティティ (DID) テクノロジーを使用して、不可分で部分的に譲渡させられることのないデジタル上の法律的人格の権利をすべての人に与えるために投資することができます。私たちは、コミュニティによって管理されるような説明責任のあるソーシャル ネットワークと分散型台帳をデジタルの世界の形で、団体結成の自由を実現できます。これらのソーシャル ネットワークと台帳は、将来のタウンホール型の対話の場や公共の場を形成し、グループ間で増大する分断を橋渡しします。プラットフォームの独占者の支配のない状態になり、当事者間でのデータ、計算、およびストレージを安全かつプライバシーを保護して共有するための暗号化技術を使用する将来の金融産業と将来の金融以外の産業を作成することにより、デジタル財産権を確保できます。政府が認識している、プライバシーを保護し、国際的に相互運用可能なデジタル通貨を使用して、取引する権利を確保できます。また、高速インターネットを基本的な人権に指定し、デジタルの理解に留まらず協働的に創造できる能力の教育を公立学校のカリキュラムの中核にすることで、すべての市民がこれらの権利にアクセスできるようにすることができます。
これらの基本的なデジタル人権を確保することで、デジタル世界での Pluralism が可能になるだけでなく、自然に持っているものにできます。台湾では、「デジタル」と「複数」の表意文字は同じで、數位です。そこでの経験や同様のエコシステムでの経験は、これらの基盤が、初期の形であっても、繁栄する民主主義をどのように促進するかを示しています。プライベートで安全な ID により、市民は vTaiwan のように、ネット荒らしや自動応答ボットからの攻撃に直面することなく、思慮深い審議と合理的な妥協案の作成に参加できます。プライベートなデータ共有により、特定企業独自のプラットフォームに依存することなく、地域やコミュニティがサービス (汚染の監視からマスク在庫を表示する地図まで)を提供できます。オープンで信頼性の高い支払の仕組みにより、手間のかかる官僚機構なしで共有財を支援するための創造的な形のクラウドファンディングが可能になります。ピアツーピアの評判情報システムにより、市民社会は活気に満ちたオープンな発言を維持しながら、多くの場合ユーモアを交えて誤報と闘うことができます。そして、その可能性に見合った投資を行うことで、より大胆な未来が間近に迫っており、量子コンピューターが他の技術パラダイムと比較して Pluralism を可能にするのに非常に適していることがますます明らかになっています。
さらに、これらのツールは世界中の公共部門を変革することができますが、国家民主主義に一時的に妥当なだけでなく、教会から企業まで、あらゆる組織がより生産的でダイナミックな協力を促進する方法を提供します。企業は、かつてないほどに迅速に社内起業や部門間基礎的な基盤を強化できます。プライベートで主権のあるデータ共有は、病気を封じ込め、治療することができます。新しい報道等のメディア環境は、従来なら情報開示を妨げる門番によって疎外されてきた声に力を与えると同時に、これまで以上に重要な事実についての信頼性を高め、妥当と同意しやすいものにできます。このように、Plurality は政治や政府のためだけのものではなく、インターネットも最初にそれを構築した軍や大学のためだけのものに過ぎなかったですが、それを活用する方法を学べば、すべての産業とすべての個人の生活をより良く変えることができる新しい技術パラダイムです。
しかし、インターネットやその他の革新的であり方を変えるようなテクノロジーと同様に、Plurality は、私たちが投資した分だけしか繁栄しません。インターネットは、米国国防総省の高等研究計画局 (ARPANET) が新しい分散型ユーザーインターフェースの設計を実験するために設立したネットワークとして始まりました。しかし、J.C.リックライダー(JCR Licklider)のような ARPANET の創設者のビジョンは、私たちも今回の Plurality を同様の構想に基づいて構想設計していますが、それを実行するために必要な公的および国際的な支援と多機関による投資を動員しなかったため、非常に部分的にしか実現されませんでした。構想が実現せずに、リックライダーが予測したように、その可能性を妨げた独占企業によって多くの可能性が占有されてしまいました。今日、今こそ、私たちはその過ちを正し、私たちのテクノロジーが私たちの最高の理想を劣化させるのではなく、その理想を明らかにし、また、実現するような未来を築く機会です。すべての活動家、アーティスト、技術者、市民、政策立案者、組織は、その未来のための闘いにおいて重要な役割を担っています。
When we see “internet of things”, let’s make it an internet of beings.
When we see “virtual reality”, let’s make it a shared reality.
When we see “machine learning”, let’s make it collaborative learning.
When we see “user experience”, let’s make it about human experience.
When we hear “the singularity is near”, let us remember: the plurality is here.